創造性と起業家精神を育む
新時代の中高教育の構築

瀧野川女子学園 理事・副校長 山口 龍介

日本は厳しい国際競争に直面しています。この競争を勝ち抜くために産業界からは学校教育の改革を求める声が20年以上前からあがっています。この要請に対して大学以下の教育機関はまだ十分に対応しきれていません。これに応えるための大学入試改革が「2020年問題」です。一方で中高の教育は、革新的な学習指導要領の改定にも関わらず、知識偏重の教育から抜け出せていないのが実情です。激しく変化する現代と未来に求められるのは、世界に通用する新たな価値と事業を創り出し続けることができる若者です。このような若者を育てる教育が求められながら、私たちが学校改革を始めた平成21年当時、日本国内の中高でそのような取り組みはほとんど行われていませんでした。

心身ともに健康で真に社会に貢献できる近代女性の育成

大正15年に創立者が学園に込めた思いにもう一度立ち戻り、私たちは、新しい価値を創り出す創造性と、それを新たな仕事へと結びつけていく起業家精神を持った人間の育成を行う教育の構築を学校改革の目標に据えました。
まず、全教科の教育手法の転換に取り組み始めました。平成22年4月からは大学でいうシラバスをより具体的な計画と実施まで追跡可能とした独自のマスタープログラムを開発。また、これらを有効に機能させるために学校のICT化を推進し、次の年にはほぼ全教職員が一人一台のMacbook Proを持ち、ネットワークベースで学校を運用できる体制を整えました。これはiPadを平成27年度に中学全学年と高校新入生に、平成28年度には全生徒1人1台のiPad、平成29年度には全生徒全教員がiPad Pro12.9インチとApple Pencilを持っての全授業、全教育活動をICT化していく取り組みへと続いていきます。この結果、紙ベースの教育ではほぼ不可能な授業進度の速さと質の高さと自由な発想を引き出す事を両立させた教育を実現しました。一例を挙げると、高校1年の日本史Aを半年掛らずに終えたり、中学2年生が高校範囲の数学を学ぶことが可能になったのです。しかも、平均点は10%から20%ほど上がっていて、理解の度合いも上がっているのです。
また、平成22年度の中学3年卒業論文代表者発表を皮切りに全教科の核となる「創造性教育」の開発を進めました。平成24年6月には東京工業大学で教育改革とデザイン思考の導入を担当する齋藤滋規准教授を評議員に、11月にはロボット創造学の世界的大家であり、日本の創造教育を牽引してきた広瀬茂男卓越教授を理事に招聘し、平成27年度より中1〜高2まで必修の学校独自設置科目「創造性教育」を実施しています。同時にデザイン思考を本格導入し、より創造性と起業家精神を育む独自の教育を構築しました。平成28年度からは、高校2年全員で「事業化実習」を行い、15人ほどのグループでの模擬企業の出資設立から、オリジナル製品の企画製作販売、そして、ハワイ大学での国際貢献事業と、起業の一連のプロセスを学んでいます。そして、平成27年度からは、これらを更に進めた独特の教育を行う中高一貫コースを設置しました。
新しい教育への生徒保護者の皆様の支持を得て、狙い通りに、創造性と起業家精神に満ちた優秀な卒業生を送り出せるようになりました。学校改革を始めて、最初の中学新入生が平成28年度に高校を卒業し、2020年度入試の目指す姿の一つでもあるお茶の水女子大学の公募推薦入試に合格したのを皮切りに、平成29年度には、国際教養大学、筑波大学情報学群、東京外国語大学、首都大学東京法学部など続々と難関大学へと進学を果たしています。嬉しいことは、これらの生徒は勉強だけに特化した生徒ではなく、クラブ活動、委員会活動、学外活動に積極的に参加し、活躍貢献してくれた生徒たちなのです。例を一つ挙げると、平成28年度に行われた埼玉県・クイーンズランド州スカラシップ「高校生短期留学プログラム」では、県内全高校生に対して募集1名のところ、当校の生徒が埼玉県を代表して「埼玉親善大使」として選ばれました。埼玉県と世界の国々との懸け橋として選ばれたこの事例に見られるように、当学園の教育を受けた多くの女性が、いずれ世界の中で日本を代表する女性となり、活躍貢献してくれることを期待しています。

山口 龍介 理事・副校長

[略歴]
東京工業大学大学院博士課程在学中の2010年より瀧野川女子学園にて
教育改革と経営改革に取り組む。専門はロボット創造学と経営。
創立者山口さとるのひ孫

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